5月27日、ブラジル政府はアマゾン熱帯雨林を縦断するBR-319号線の整備に7500万ドル(約115億円)を投じると発表した。あわせて環境保護計画も示し、道路の両側各50kmの帯を監視するとした。だが環境団体は、この開発と保護の同時進行を額面どおりには受け取っていない。1976年に開通しながら大半が未舗装のまま残るこの幹線をめぐる議論は、COP30を今秋に控えたブラジルの足元を揺らしている。
なぜ今、BR-319か
BR-319はアマゾナス州マナウス(人口200万超)とロンドニア州を結ぶ、870kmほどの幹線だ。舗装が通れば孤立したマナウスへのアクセスは一変し、物流コストも下がる。ルラ大統領の政権は、開発の恩恵を北部にも届ける、という言い方でこの計画を据える。
問題は、アスファルトが敷かれた後に何が続くかにある。1970〜80年代のアマゾン開発が見せたとおり、幹線が通れば支線が枝分かれし、入植が加速し、違法な伐採や採掘が森の深部まで届く。ブラジル気候観測所は2024年、予備免許の取り消しを求めて提訴した。先住民への事前協議と気候影響評価が省かれた、というのが主張だ。この道路は69の先住民テリトリーと18,000人を超える先住民に影響するとされる。
見えてきたティッピング・ポイント
今年5月、研究誌モンガベイに載った論文が新たな警告を出した。熱帯雨林の22〜28%が失われ、かつ地球温暖化が摂氏1.5〜1.9度に達すれば、アマゾンは2040年代にもティッピング・ポイント(転換点)を越えうるという。転換点とは、森が自力で再生できなくなり、乾いたサバンナ化が加速する状態を指す。その間にも、木は毎秒5本のペースで失われているとの推計がある。
追い打ちをかけるように、ブラジル議会は、違法に伐採された土地の商業利用を規制する際に衛星画像を使うことを禁じる法案を可決した。環境ルールの執行そのものを削る中身で、行政と立法が逆を向いている。ルラ政権は今秋のベレン(COP30)で、アマゾンの守護者として世界に立とうとしている。だがBR-319への投資と議会の反環境立法が同時に報じられれば、その看板は色あせる。国内の開発の取り分を取るか、国際的な気候公約を守るか。ブラジルがどちらに体重をかけるのかは、年末の会議の演説ではなく、この雨季に森がどれだけ削られるかでわかる。
道路が舗装される前から、アマゾンの木は毎秒5本のペースで倒れている。
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参考リンク
- The Washington Post — washingtonpost.com
- Carbon Brief — carbonbrief.org
- Mongabay — mongabay.com
- openDemocracy — opendemocracy.net
※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。