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【追記・2026年7月20日】 本記事は6月2日の提案段階を扱ったものです。その後、USTRは7月15日に301条にもとづく最終措置を発表し、ブラジルからの輸入品への25%追加関税は7月22日に発効しました。牛肉・コーヒー・オレンジおよびオレンジジュース・航空機部品・医薬品などは除外されています。確定後の中身は「ブラジルへの25%関税が確定──税率は下がり、しかし『長持ちする』設計になった」で詳しく書きました。以下は6月2日時点の解説として残しています。

6月2日、トランプ政権がブラジル製品に25%の新関税を課す方針を打ち出した。「不公正な貿易慣行」を名目に挙げるが、その背景には、ボルソナーロ元大統領の訴追をめぐる政治的な怒りも色濃くにじむ。

「制裁」から「交渉」へ

今回の25%関税は、昨年課された50%の高関税に代わるものだ。ただしその50%は国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠としており、2026年2月に米最高裁が同法による関税を違法と判断したことで失効している。今回の25%は通商法301条という別の法的根拠で改めて打ち出されたもので、一律の締め付けではなく、品目ごとの交渉余地を残している。7月6日には公聴会が予定されており、この時点ではまだ確定した措置ではない(公聴会は7月6〜7日に実施され、7月15日に25%が正式決定した)。米通商代表部(USTR)が挙げる不公正貿易の中身は、デジタル貿易規制や違法伐採絡みの輸出品など複数にわたる。

経済と政治が交差する場所

米国はブラジルに対して貿易黒字を抱えており、本来「赤字是正のための関税」という論理は成り立ちにくい。それでも強硬姿勢が続く背景として指摘されるのが、ルーラ政権によるボルソナーロ元大統領への訴追だ。トランプ政権はこれを同盟的な政治家への弾圧と見ており、昨年の50%関税もその一環だったと複数のメディアが伝える。外交的な対立が、通商政策に直接乗り移っている構図だ。

中国という「出口」の両義性

ブラジルはここ数年で輸出先を中国やグローバルサウス各国へ急速に多角化させてきた。大豆・鉄鉱石・原油は中国が最大の買い手で、米国の締め付けが強まるほどこの流れは加速する。ただしそれは、中国依存という新たな不安定要因も生む。ブラジルの2026年の成長見通しは地域平均を下回る2%前後(ブラジル中銀のFocus調査による市場コンセンサスで1.9〜2.0%)にとどまり、財政余力は限られている。25%関税が確定すれば、製造業・農業機械セクターへの打撃は無視できない規模になると分析される。「米国か中国か」を選ばずに済む外交空間を保てるかが、今後の焦点だ。

「貿易の公正」を名目にした関税は、しばしば政治の道具として機能する。

参考リンク

※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。