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チリのホセ・アントニオ・カスト大統領は2026年6月1日、就任後初の年次施政方針演説(スペイン語でクエンタ・プブリカ)を議会で行いました。治安強化・歳出削減・移民規制を柱とする改革路線を改めて打ち出した内容です。ただ、足もとの経済指標は芳しくなく、就任以来下がり続けている支持率と分断した議会のなかで、掲げた法案をどこまで実現できるかは見通せません。この記事は2026年6月時点の整理です。

演説が示した優先事項

カスト政権が最も力を入れるのは公安政策です。警察力の強化と移民の入国審査の厳格化は昨年の選挙公約の核心であり、演説でも改めて約束されました。あわせて、犯罪で有罪となった人から一部の社会給付を取り上げる方針や、警官・医療従事者・公共交通の利用者への暴力を記録する「破壊行為・無秩序の登録簿」の新設も打ち出されました。

経済面では、電力料金制度の見直しや、企業の事業を妨げる手続きの簡素化、中小規模の鉱業を対象とする規制の近代化などが示されました。投資環境を整え直すための経済法案はすでに議会に提出され、上院で審議が続いています。

GDP縮小と高い失業率という現実

演説の背景には厳しい数字があります。2026年第1四半期のGDPは、前期比でマイナス0.3%と縮小しました。投資の鈍化と、銅をはじめとする輸出の落ち込みが響いた形です。失業率は3年以上にわたって8%を超え続けており、現政権が発足する前から続く慢性的な低迷です。物価は他のラテンアメリカ主要国より早く落ち着きつつありますが、家計の実感はなかなか改善されていません。

議会の分断が最大のハードル

チリ議会は与野党が拮抗しており、カスト政権が単独で法案を押し通せる状況にはありません。移民関連の法改正や歳出削減を組み込んだ路線は、中道左派の野党から反発を受けています。前のボリッチ政権が進めてきた社会政策の一部を見直す動きも、摩擦を生んでいます。世論調査では就任以来、支持率が大きく下がっており、「まず目に見える成果を」というプレッシャーは強まっています。

選挙公約と現実の距離

カスト政権が示す路線は一貫しています。ただ、就任から半年で経済の縮小と高失業が重なり、議会も割れた状態では、改革の実現スピードは当初の想定より落ちざるをえません。治安が目に見えて改善されなければ、あるいは移民政策が国際社会の批判を招けば、支持率への影響は避けられないでしょう。カスト政権の実力が問われるのは、これからです。

用語メモ

Cuenta Publica(クエンタ・プブリカ)は、チリの大統領が議会で行う年次の施政方針演説のこと。直訳すると「公的な報告」で、1年間の実績と今後の方針を国民に説明する場です。スペイン語の cuenta は「勘定・報告」、publica は「公的な」を意味します。

チリは「鉄の拳」路線と財政緊縮の同時進行という、難しい実験の只中にあります。

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参考リンク

※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。