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ミチョアカン州ナワツェンで生まれ育った人に、6月11日のことを訊いたら、どんな答えが返ってくるだろう。この日、首都のアステカ・スタジアムではワールドカップの開幕式が始まり、シャキーラがステージに立っていました。その900キロ北の山あいの町で、警官5人が射殺され、5人が重傷を負っています。容疑者はCJNG(ハリスコ新世代カルテル)傘下とみられる集団。同じ国の、同じ一日のなかで起きたことです。

「メンチョ」が死んでも、組織は縮まなかった

2月22日、ハリスコ州タパルパで、メキシコ軍がルベン・オセゲラ・セルバンテスを射殺しました。通称「エル・メンチョ」、CJNGを率いてきた創設者です。これだけの人物が消えれば、カルテルは揺らぐはずだと多くの人が思いました。

ところが現実は逆でした。報復の銃撃はその日のうちに各地で始まり、後継を狙う者たちは支配地域を広げることで自分の力を示そうとしています。リーダーが抜けると、組織は静かになるどころか、空いた席をめぐる内部競争が周囲への攻撃として噴き出す。この種の集団では、それがいつものパターンです。ナワツェンの一件も、その流れの上にあります。

プレペチャの土地という「前線」

ナワツェンは、プレペチャ(Purépecha)民族の暮らす地域にあります。プレペチャは、自治防衛組織アウトデフェンサスが比較的うまく回っているコミュニティとして知られてきました。独自の検問所を置き、道路を封鎖し、カルテルへの抵抗を続けてきた人たちです。

それでもCJNGは、ここ数年ミチョアカンへの侵入をやめません。州検察(FGE)は、コロンビア人の工作員が現地作戦を手伝っていることを確認しています。プレペチャ地域には鉱物採掘の権益もあり、カルテルが領域を広げたい理由と、ぴたりと重なります。自治で守ってきた土地が、いま前線になっているわけです。

祭典と暴力が、同じ日に並ぶこと

アステカで歌声が響いていたとき、ミチョアカンでは銃声が鳴っていた。この対比は、メキシコという国の今をそのまま映しています。W杯の国際的な視線が首都や沿岸都市に集まったからといって、内陸の治安が急に手薄になるわけではありません。ただ、報道の光が当たる場所はどうしても偏ります。

華やかな一日と血の流れた一日が重なると、片方を語ることで、もう片方が見えにくくなる。先住民の土地で起きていることは、開幕式のニュースの陰に隠れやすい。だからこそ、僕はここに書き留めておきたいと思います。

首領が消えた組織は静かにならない。空いた席を奪い合う音が、外へ向かって鳴り響くだけです。

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※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。