7月25日から31日にかけて、コロンビア第2の都市メデジンで「コロンビアモーダ(Colombiamoda)2026」が開かれる予定です。37回目となる今年は、これまで数日間だった会期を丸1週間に広げ、主催者は「コロンビアのファッションウィーク」と位置づけ直しました。掲げられたテーマは「Uniqueness is the New Luxury(唯一無二こそが新しい贅沢)」。大量生産の対極に、職人技と土地の固有性を置こうという宣言です。
何が予定されているか──1週間に拡張された見本市
主催は繊維・アパレル産業の業界団体インエクスモーダ(Inexmoda)。商談の中核となる見本市は7月28〜30日、市中心部の複合会場プラサ・マヨールで開かれ、その前後にランウェイや街なかのイベントが組まれる構成です。主催者の見込みでは、およそ50か国から7万人超の来場者、1万7,000人の専門バイヤー(うち国際バイヤー約4,000人)、200を超えるブランドとデザイナーが集まるとされています(Semana、Colombia One)。あくまで開催前の予測値である点は押さえておきたいところです。
口火を切るのは7月25日の「オープニング・ウィークエンド」。コロンビアの革製品ブランド、ベレス(Vélez)と、メデジン出身の音楽アーティスト、Jバルビンによる共作ショー「Artisan Gang in The City」が予定されています。両者の協業はこれで4回目。アンティオキア地方のラバ追い(アリエロ)が都市へ出ていく物語を軸に、カリエルと呼ばれる革の肩掛け鞄、ポンチョ、アルワコ族の織物、乗馬ブーツといったモチーフを再解釈した28ルックを、5つの章立てで見せる構成だと報じられています(El Tiempo)。公式プログラムのランウェイは7月27日、デザイナーのマヌエラ・アルバレスが開幕を飾る予定です。
背景──1907年から続く「繊維の街」
メデジンが繊維の街になったのは最近のことではありません。1907年、エチャバリア家がコロンビア初の近代的な紡織工場としてコルテヘル(Coltejer)を設立し、1920年代にはファブリカート(Fabricato)が続きました。20世紀を通じて、これらの工場は数千人規模の雇用を抱え、都市の骨格そのものをつくってきました。今日でも繊維・アパレルの輸出はアンティオキア県が国内最大です。
1980年代から90年代にかけて、この街は麻薬組織を軸とする暴力の激化に直面し、殺人発生率が世界最悪水準に達した時期があります。その後の治安改善と公共交通・公共空間への投資を経て、メデジンは「デザインシティ」を名乗るようになりました。コロンビアモーダは、その転換を対外的に示す看板イベントとして規模を広げてきた催しです。
論点──産業の規模と、ブランドの野心の落差
ただ、産業としての足元は華やかさほど強くありません。コロンビアのファッション産業の輸出は2025年1〜5月で3億7,020万ドル、前年同期比2.7%増にとどまり、通年でも9億ドル台という見立てが業界団体から出ていました(Infobae)。最大の輸出先は米国(約31%)、次いでエクアドル、メキシコ。しかも、長年コロンビアの看板だった水着は需要を落としつつあり、代わりに補正下着やブラジャー、家庭用テキスタイルが数字を支えている構図です。
「唯一無二こそが新しい贅沢」というテーマは、この構図への回答として読めます。価格でアジアの生産国と張り合うのではなく、職人技と物語を乗せた単価の高い市場へ移る──ベレスが世界的アーティストと組み、アルワコ族の織物やカリエルを前面に出すのは、まさにその路線の実演です。同時に、インエクスモーダが今年の知見プログラムの軸を「拡張・価値・真正性」の3つに置いたことも、輸出の伸び悩みを意識した設計に見えます。
筆者の視点
僕がこのイベントを面白いと思うのは、それが「文化イベントの顔をした産業政策」だからです。7万人の来場者数はニュースの見出しになりやすい数字ですが、産業の健康状態を測るには向いていません。見るべきは1万7,000人の専門バイヤー、とくに国際バイヤー4,000人という数字のほうで、これは「商談の場としてどれだけ機能しているか」の代理指標です。文化的な華やかさと商業的な成果は、しばしば別々に動きます。
もうひとつ気になるのは、「唯一無二」という言葉の使われ方です。職人技を前面に出す戦略は、うまくいけば地方の工房に利益が回りますが、モチーフだけを借りて生産は工場、という形にもなりやすい。アルワコ族の織物のような先住民の意匠が関わる以上、誰が意匠を提供し、誰が対価を受け取るのかは、テーマの真偽を測る具体的な物差しになります。ラテンアメリカの他の見本市——ブラジルのサンパウロ・ファッションウィークやメキシコシティのそれ——と比べても、コロンビアモーダは「商談量」に軸足を置いてきた催しです。その強みを保ったまま単価を上げられるかが今回の焦点でしょう。
ウォッチすべき指標は2つ。会期後にインエクスモーダが公表する商談成約額・国際バイヤーの実来場数と、2026年通年のコロンビアのファッション輸出額が9億ドルの壁を越えるかどうか。テーマがスローガンで終わったのか、値付けを変えたのかは、この2つに表れます。
用語メモ
Inexmoda(インエクスモーダ)=コロンビアの繊維・ファッション産業の振興団体、コロンビアモーダの主催者。arriero(アリエロ)=ラバを追って山越えの物流を担った人々、アンティオキア地方の象徴的なイメージ。carriel(カリエル)=アリエロが肩から提げた革の多室鞄。sistema moda(システマ・モーダ)=繊維から縫製・小売までを一体で指すコロンビアの産業区分の呼び方。
7万人という来場者数より、国際バイヤー4,000人のほうが産業の体温をよく示している。
参考リンク
- Colombiamoda | La Semana de la Moda de Colombia 2026(公式サイト) — colombiamoda.com
- Colombiamoda 2026 revela los primeros detalles de su edición número 37 en Medellín | Semana — semana.com
- Todo listo para Colombiamoda 2026 ¡Prográmese! | El Colombiano — elcolombiano.com
- Colombiamoda 2026 amplía su formato y abrirá su programación con un desfile de Vélez y J Balvin | El Tiempo — eltiempo.com
- Fashion Leaders Set to Gather in Medellín for Colombiamoda 2026 | Colombia One — colombiaone.com
- La moda colombiana suma USD370 millones en exportaciones en 2025 | Infobae — infobae.com
※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。