エクアドル国会は2月26日、「戦略的鉱業・エネルギーセクター強化のための有機法」を賛成77・反対70の僅差で可決した。3月2日に発効したこの法律は、採掘プロジェクトの環境ライセンス制度を根本から変える内容で、環境団体と先住民族組織が強く反発している。
何が変わったか
最大の変更点は、詳細な審査を経て可否を判断する「環境ライセンス」を唯一の入口とする仕組みをやめ、プロジェクトのリスク水準に応じて振り分ける「環境認可(autorización ambiental)」へ再編したことだ。高影響の案件には従来どおり完全な環境ライセンスが残る一方、低影響とされた案件は登録や証明といった簡易な様式で足りることになる。指定された鉱業クラスター内のプロジェクトでは、環境影響評価の期間が従来の18〜24カ月から12〜15カ月へ短縮された。政府は「ライセンスの廃止ではない」と強調するが、批判者は振り分けの裁量そのものが環境審査の骨抜きにつながると見る。金・銅を中心に銀やモリブデンの埋蔵も見込まれるエクアドルで外資誘致を加速させたい政府の意図は明確で、採掘を「戦略的セクター」と明示的に位置づけている。
IMFとの取り決めが背景に
法改正を後押ししたのは、エクアドルが結んでいるIMFとの取り決めだ。石油収入への過度な依存から脱却するため、鉱業セクターの投資・生産拡大が明示的に求められている。財政の安定を優先する政府と、環境保護と先住民の権利を訴える市民社会の対立が、今回の法律で一気に表面化した。賛否がわずか7票差だったことは、議会の分断の深さを物語る。
ガラパゴスと先住民族が払うコスト
環境NGO「アマゾン・フロントラインズ」は、新法がアマゾン流域の先住民族領域とガラパゴス諸島にも影響を及ぼすと指摘する。環境審査の様式が簡略化されることで、独立したチェックなしに採掘許可が下りるケースが増えかねないという懸念だ。ガラパゴスについては、国立公園内での採取を明文で禁じる一方、公園外の「持続可能利用区域(ZAS)」では自治体の許可で建設用の砂利・石材(áridos y pétreos)を採取できる条項が土壇場で盛り込まれた。対象は保護区外の約3%の土地に限られると説明されているが、脆弱な島嶼で民間による採取と都市拡張を招くとして議会内からも撤回を求める声が上がった。隣国ペルーのマドレ・デ・ディオスでは、金採掘による森林減少の累計が2025年半ばで約13.9万ヘクタールに達している(MAAP)。「審査を速くする」のか「無力化する」のかは、条文より運用が決める問いであり、その答えはこれから出てくる。
環境審査を「速くする」のか「無力化する」のかは、紙一重の差しかない。
参考リンク
- Amazon Frontlines — amazonfrontlines.org
- Business & Human Rights Resource Centre — business-humanrights.org
- Peoples Dispatch — peoplesdispatch.org
- Ecuador Brief — ecuadorbrief.com
※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。