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電気自動車や蓄電池に欠かせないリチウム。その世界最大級の埋蔵が、アルゼンチン・ボリビア・チリの三国がまたがる高地の塩湖に眠っている。「リチウム・トライアングル」と呼ばれるこの地域が、脱炭素時代の鉱脈として、世界の争奪戦の中心になっている。

「白い金」から「供給の確保」へ

2026年のUSGSデータでは、埋蔵量はアルゼンチン2,800万トン、ボリビア2,300万トン、チリ1,300万トン。2020年代初めの投機的な「白い金ラッシュ」は、いまや「供給をどう確保するか」の局面に移った。自動車メーカーやデータセンターの蓄電事業者が長期契約を押さえに動き、焦点は「誰が可能性を持つか」から「誰が実際の鉱石を持つか」へ変わった。

チリの大型合意

チリでは2026年3月、国営銅企業コデルコとリチウム生産大手SQMが、塩湖から2060年までリチウムを採る共同事業「ノバアンディーノ・リティオ」を立ち上げた。トコナオなど塩湖周辺の村に数百万ドル規模の利益と環境監視の強化を約束する仕組みで、鉱物に富むチリでは初の試みとされる。一方で、この合意が先住民コミュニティに亀裂を生んだとも報じられている。

脱炭素の代償は誰が払うか

リチウムの採掘は、塩湖の水を大量に使う。乾いた高地で、水は先住民の暮らしと生態系の命綱だ。脱炭素のための鉱物が、現地の水と人権を脅かす——国家も企業も人権上の義務を十分果たしていない、という指摘がある。電池の裏側には、塩湖の水とそこに暮らす人たちがいる。

世界が脱炭素を急ぐほど、トライアングルの圧力は強まる。問題は「掘るか掘らないか」ではなく、採掘の利益と負担をどう分け、水と暮らしと先住民の権利をどう守るか、という設計だ。きれいなエネルギーの代償を、いちばん遠い高地の人たちだけに払わせない仕組みが要る。

電気自動車の電池の裏側に、塩湖の水と、そこに暮らす人たちがいる。

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※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。