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PAHO(汎米保健機構)とコロンビア保健社会保護省が5月27日、首都ボゴタで「非感染性疾患のためのより良いケア(Better Care for NCDs)」イニシアチブのワークショップを開きました。心疾患・糖尿病・がん・慢性呼吸器疾患といった非感染性疾患(NCDs)は、アメリカ大陸で長く死亡原因の最上位を占めてきました。にもかかわらず、その管理を医療システムにきちんと組み込めている国はまだ少ない——その問題意識が会議の背景にあります。

中南米を蝕む非感染性疾患

アメリカ大陸全域では、毎年220万人が30歳から69歳という「働き盛り」の年代でNCDによって亡くなっています。これは早すぎる死(早世)に分類される規模です。PAHOによれば、過去20年でNCDによる死亡総数は31%増え、とくに40〜64歳での増加が目立つといいます。

背景には高齢化に加えて、超加工食品の広がり、身体活動の低下、肥満の増加があります。地域差も大きく、一次医療(プライマリケア=基礎的な地域医療)の整備が遅れている低中所得の国ほど、死亡率が高い傾向が指摘されています。

ボゴタ会議が議論したこと

ワークショップの主題は、コロンビアが進める「NCDs管理10年計画」の策定に向けた技術協力でした。PAHOで非感染性疾患・メンタルヘルス部門を率いるアンセルム・ヘニス氏は、予防・リスク因子の低減・プライマリケアの強化という三つの柱の重要性を強調しています。

論点の一つになったのが食品表示の改善です。チリが先行して導入した、健康に悪い成分を前面で知らせる「警告ラベル」制度のコロンビア版をどう展開するか、といった具体策が話し合われました。参加者が共有したのは、専門病院に集中させるのではなく、地域の診療所レベルでNCDsを早期に見つけて管理する仕組みを築くこと——それが費用対効果と患者の生活の質の双方を高める、という方向性です。

プライマリケアとケアの連続性

NCDsへの対応でプライマリケアが重視されるのは、疾患そのものの性質によります。高血圧・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、いったん診断されれば長期にわたる管理が欠かせません。そのたびに専門病院へ通うのは、患者にとっても医療財政にとっても続けにくい仕組みです。

逆に、地域の診療所が服薬の管理・生活習慣の指導・早期スクリーニングを担えれば、急性期病院への不要な受診を減らしながら重症化を防げます。コロンビアはEPS(社会保険方式の保険基金)の財政難という構造的な問題を抱えており、プライマリケアの底上げは医療制度全体の持続可能性とも直結します。

2025〜2030年の地域行動計画

ボゴタのワークショップは、より大きな枠組みの一部です。2025年10月、PAHOの第62回指導理事会で、アメリカ大陸全体の「非感染性疾患の予防・管理行動計画(2025〜2030)」が承認されました。リスク因子の低減、NCDsの一次医療への統合、そしてサーベイランス(監視)の強化という三本柱で構成されています。

各国はこの域内計画を土台に、自国の実施計画を立てることが求められています。コロンビアの10年計画は、その最初の具体例の一つです。

筆者の視点

「慢性疾患を一次医療へ」という話は、一見すると制度の効率化の議論に見えます。けれども、障害や慢性疾患とともに生きる人の側から眺めると、これは生活の質そのものに関わるテーマです。NCDsへの早期介入と継続的なケアが届くかどうかは、就労を続けられるか、社会に参加できるか、補装具や補助具を適切に使い続けられるか——そうした日々の足場と地続きだからです。

僕は補装具の費用支給制度や社会保障を研究してきて、コスタリカをはじめ中南米の現場にも長く関わってきました。そこで繰り返し感じたのは、立派な計画があっても、地域の診療所まで物と人と知識が届かなければ、絵に描いた餅で終わるということです。医療が「病気を治す場」から「生活を支える仕組み」へ移れるかどうか——NCDs対策は、その転換が本当に進んでいるかを測る試金石になると思います。プライマリケアの強化は、地味ですが、いちばん効く一手だと僕は見ています。

用語メモ

NCDs(Enfermedades No Transmisibles=非感染性疾患)は、感染ではなく生活習慣や加齢などが関わる慢性疾患の総称です。Atención Primaria(一次医療/プライマリケア)は、地域の診療所が担う基礎的な医療のこと。EPS(Entidades Promotoras de Salud)はコロンビアの社会保険を運営する保険基金で、医療制度の要でありながら財政難が長く課題になっています。

医療が「病気を治す場」から「生活を支える仕組み」へ移れるか——NCDs対策は、その試金石です。

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※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。