ニッカウヰスキーが世界に誇るブレンデッド、From The Barrel(フロム・ザ・バレル)。世界的な評価が高く、近年は日本国内で定価入手が難しくなっている銘柄だ。今回はうちの棚に並んでいる2本——左が日本国内品、右が並行輸入品——を並べて、ラベルと中身の違いを確かめてみた。
違いは主に「箱」
並べてみて意外だったのは、ボトルのラベル自体は表面の表記を見るかぎり大きな差はないこと。日本国内品(左)と並行輸入品(右)でロゴの位置・銘柄名・度数表記(51.4%)はほぼ同じで、よく見ると裏面の輸入者表記や原産国表記、欧州市場向けのバーコード・小さな注記の有無といった細部だけが違う、という程度だ。
パッと見で大きく差が出るのは外箱のデザインのほう。並行輸入品(右)は欧州小売向けに作られた化粧箱で、配色やNikkaロゴの扱いが海外向け仕様。日本国内品(左)はおなじみの国内仕様の化粧箱で、雰囲気がだいぶ違う。棚に立てて見比べると、ボトルより箱で「あ、別物だ」と気づく。
結論から言うと、中身(液体)はどちらも同じと理解している。製造ロット差・流通経路(船便での温度履歴)・保管期間で微妙な差が出る可能性はあるが、レシピも度数も「ニッカ From The Barrel」として統一されている。並行輸入品が安く売られていることがあるのは中身の差ではなく、税関や流通マージンの違いによるものだ。
"Re-vatted"——二度詰めという独特の製法
From The Barrel の特徴は、ニッカ独自のRe-vatted(リ・ヴァッテッド)と呼ばれる製法にある。通常のブレンデッドは「モルト原酒+グレーン原酒をブレンドして瓶詰め」だが、From The Barrel はブレンドした後に再度樽に戻し、数ヶ月寝かせて馴染ませてから瓶詰めする。これによって原酒同士が一体化し、まろやかさと密度の高い味わいが生まれる。
アルコール度数が51.4%と異例の高さなのもポイント。瓶詰め直前に最低限の加水しかせず、樽出しに近い濃度をそのまま閉じ込めている。「From The Barrel(樽から)」という商品名が示す通りだ。
飲んでみるとノーズはバニラ、シェリー、ナッツ、わずかにピート。口に含むと最初に甘みとコク、続いて高アルコール由来のスパイシーさと木の香り。フィニッシュは長く、ドライフルーツとカカオが残る。500mlの小ぶりな角瓶(180mlのキャップ含む)にこの密度が詰まっているのは、コスパとしてはかなり凶悪だ。
2015年に英Whisky Magazineの「Best of the Best」を受賞したあたりから世界的に火がつき、2018年頃には品薄が常態化した。並行輸入で海外から逆輸入される——という現象が起きるくらい、世界中で奪い合われている。
並行輸入と国内正規、どっちが「本物」かという議論が起きがちだけど、両方ニッカが作って世界に出荷した本物だ。違うのはパッケージと辿った航路だけで、グラスに注がれた瞬間にその差はほぼ消える。せっかくなので両方並べて比べる時間を持てたのは、ちょっとした贅沢だった。
From The Barrel 背景情報
発売の歴史
1985年発売。ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所と余市蒸溜所のモルト原酒、自社グレーン原酒をブレンドし、再度樽で熟成させる「Re-vatted」製法を採用。長らく国内向け廉価ブレンデッドの位置付けだったが、海外輸出を経て世界的評価が逆輸入された。
世界での評価
Whisky Magazine「Best of the Best 2007」受賞、World Whiskies Awards でも何度もカテゴリー上位。フランスを中心に欧州での人気が極めて高く、「ジャパニーズブレンデッドの代表格」として認知されている。
並行輸入品と国内品の違い
液体は同一。違いは主に(1)外箱のデザイン(国内仕様 vs 海外仕様)、(2)裏ラベルの輸入者表記やバーコードなど細部、(3)輸送経路と保管温度履歴、(4)流通価格。並行輸入品が国内品より安く売られていることがあるが、輸送コンディションは確認できないので、長期保管された個体に当たる可能性はある。
需給が落ち着いてきた現在、Amazon でも500mlボトルが入手しやすくなっている。並行輸入品/国内品を選んで購入可能。
