静岡県焼津市のガイアフロー静岡蒸溜所が出すシングルモルトの定番ラインUNITED S。日本のクラフト蒸溜所の中でも特殊な立ち位置にある一本だ。
UNITED S の核は、蒸溜所が持つ2基のポットスチルを組み合わせる思想。1基目(W)は世界的にも珍しい薪直火加熱のスチル、2基目(K)は閉鎖した軽井沢蒸溜所から移設したスチルで、その2系統の原酒をブレンドして「静岡のテロワール」を表現する、というコンセプト。
静岡の自然と2系統スチルの組み合わせ
2016年稼働の静岡蒸溜所は、富士山と南アルプスから流れる伏流水を仕込み水に使い、近隣で採れた静岡県産大麦も部分的に使う。レギュラー化された UNITED S シリーズは、季節版(夏/冬)として年2回リリースされ、ボトラーは Gaiaflow Distilling Co. 名義。アルコール度数は50.5%前後、500ml中心の容量設計。
ノーズはバニラとはちみつ、続いてフレッシュな麦芽、奥にうっすらと薪直火由来のスモーク。口に含むと甘やかで繊細、後半に軽井沢K由来とおぼしき木のスパイスと苦みが顔を出す。フィニッシュは中程度。50.5%でもストレートで疲れない、繊細な構成。少量加水でフルーツ感が広がる。
「軽井沢の遺伝子」を引き継いだ蒸溜所
2000年代初頭に閉鎖された軽井沢蒸溜所はオークションでボトル1本数百万円が付くこともある幻の蒸溜所。その閉鎖時に売却された設備の一部が静岡に移設され、後継的なスチル(K)として現在も使われている、という経緯は日本のクラフトウイスキー史の重要なトピックだ。「軽井沢のスピリットそのもの」ではないが、軽井沢のスチルが今も新しい原酒を作り続けている、という意味で UNITED S は単なるレビュー対象を超えた歴史的価値も帯びている。
クラフト蒸溜所の面白さは、各社が「テロワール」をどう設計するか、にある。静岡は2基のスチル+富士山系の水+静岡産大麦の組み合わせで、明らかに他蒸溜所と違う設計図を描いている。
ガイアフロー静岡蒸溜所
2016年稼働
静岡県焼津市にある日本のクラフト蒸溜所。創業者の中村大航氏が運営するガイアフロー社が運営。富士山系・南アルプス系の伏流水を仕込み水に使う。
2基のポットスチル
初代設備として、薪を直接焚く伝統的な「薪直火」スチル(W)と、閉鎖した軽井沢蒸溜所から移設した中古スチル(K)を持つ。両者の原酒を異なる比率で組み合わせるのが UNITED S シリーズの設計思想。
軽井沢蒸溜所と日本のクラフト史
軽井沢蒸溜所は1955〜2011年に稼働した蒸溜所で、現在はオークションで超高値が付く幻の蒸溜所。設備の一部が静岡に移設されたことで、軽井沢のスチル自体は現在も稼働している、という構造が日本のクラフトウイスキー史の重要な接続点になっている。
正規流通はあるが小ロット販売中心、限定エディションが多い。