うちの棚に並んだウイスキーの中で、ちょっと特別な一本が イチローズモルト 秩父 Red Wine Cask 2023。Ichiro's Malt & Grain ホワイトラベルと同じベンチャーウイスキー(秩父蒸溜所)のシングルモルトだ。
これは普通に買ったわけではなく、ウイスキーくじで当選した。日本のウイスキー専門店では、入手困難な銘柄を1口数千円のくじで販売することがあって、当たれば定価以下で手に入る——という仕組み。秩父のシングルモルトはレギュラーで定価3万円〜、二次流通だと数万〜十数万円する世界なので、当たった瞬間にちょっと手が震えた。
赤ワイン樽でフィニッシュした秩父シングルモルト
Red Wine Cask 2023 は、秩父蒸溜所が出すフィニッシュ樽シリーズの限定ボトル。バーボン樽やシェリー樽で熟成した秩父原酒を、最後にフレンチオークの赤ワイン樽に移して数か月〜年単位で追熟したもの。アルコール度数50%、世界各国に少量ずつ流通する限定品。
ノーズはまず赤ワイン由来のカシス・赤い果実・ほのかなタンニン。続いて秩父らしいオレンジピールと木のスパイス、ダークチョコ。口に含むとリッチな果実感、ベリーのジャム、後半にスパイス。フィニッシュは長く、ワイン樽の渋みと甘みが舌に残る。50度らしい密度があり、加水でフルーツ香が一段開く。
くじで当てた一本という記憶
定価で正規ルートから買えなかった一本を「運」で手に入れた、というのは、味の感じ方にバイアスを掛ける。素直に「うまい」と書きたくなる気持ちは抑えつつ、フラットに評価しても、これは秩父原酒の繊細さとフレンチオーク赤ワイン樽の濃厚さが噛み合った、技術的にも十分高い完成度の一本だと思う。
ウイスキーくじは「博打」と「祝祭」の中間にある独特の文化で、当てたあとに開ける夜は普通のテイスティングと違う重量を持つ。記録として残しておきたい一本。
秩父 Red Wine Cask シリーズ
秩父蒸溜所のフィニッシュ樽戦略
シングルモルト「秩父」は熟成樽の選択を非常に細かくコントロールしており、レギュラーのアメリカン・オークやスペイン・シェリーに加え、フレンチ・オーク赤ワイン樽、日本のミズナラ樽、IPA樽などのフィニッシュも限定リリースしている。Red Wine Cask は2009年初リリース以降、断続的に毎年1ロットを出している人気シリーズ。
2023年版
2023年版は世界的に少量流通の限定品。フレンチオークの赤ワイン樽でフィニッシュされ、アルコール度数50%、ノンチル・ノンカラー仕様。
ウイスキーくじ文化
日本のウイスキー専門店では、入手困難な銘柄を抽選販売する「ウイスキーくじ」が定着している。1口数千円〜数万円の参加費で複数のボトルから1本がランダムで届く仕組みで、市場価値より安く入手できる可能性がある。健全に楽しむ範囲で、というのが大前提。
正規品はAmazon.co.jpでも見かけるが、限定生産で在庫変動が大きい。