前回紹介したラリマールの原石には、買った店がある。サントドミンゴ旧市街のカジェ・ラス・ダマス44番地、「フロール・アンバル・ギフトショップ(Flor Ámbar Gift Shop)」。石造りの壁にタイルの看板が埋め込まれ、入口の柱には「LARIMAR」の文字が——よく見ると、その文字自体が青いラリマールの小石を敷き詰めて作られている。今回はこの店の話をしたい。
アメリカ大陸で最初に敷かれた通り
店があるカジェ・ラス・ダマス(Calle Las Damas=貴婦人たちの通り)は、16世紀初頭に整備された、アメリカ大陸で最初に敷かれた通りとされる道だ。名前の由来は、コロンブスの息子ディエゴの妻マリア・デ・トレドに仕えた貴婦人たちが、夕方にここを散歩したことにあるという。通り沿いには植民地時代の石造りの建物が連なり、街灯と石畳が500年前の景色をそのまま残している。
観光客で賑わう歩行者天国のカジェ・エル・コンデから一本入るだけで、通りの空気は静かになる。その静かな通りの一角に、この店の琥珀色の看板と、扉いっぱいに吊るされたカラフルな仮面が現れる。嫌でも目に入る店構えだ。
入口で出迎える「足の悪い悪魔」
扉に吊るされているのは、ドミニカ共和国のカーニバルに登場する道化の悪魔「ディアブロ・コフエロ(Diablo Cojuelo=足の悪い悪魔)」の仮面だ。毎年2月、ラ・ベガの町のカーニバルを筆頭に、この角だらけの悪魔が全国の通りを練り歩く。店先のものは国旗と同じ青・赤・白に塗られ、角の一本一本までトゲが生えていた。土産物として絵になる一方で、張り子の作りは本気そのもの。カーニバルの熱量が、2月でなくても店先から伝わってくる。
琥珀とラリマール、二つの石の店
店名の「フロール・アンバル」は「琥珀の花」という意味だ。その名の通り、この店のもう一つの主役は琥珀(アンバル)。ドミニカ共和国は世界有数の琥珀の産地で、北部の山地からは、光にかざすと青く輝く希少な「ブルーアンバー」も採れる。店の奥のガラスケースには、琥珀とラリマールのアクセサリーがぎっしりと並んでいた。
面白かったのは、店の人が売り物とは別に、大きな琥珀の原石を持たせてくれたことだ。両手に余るほどの岩の表面に、磨かれた「窓」がいくつか開いていて、そこから飴色の透明な中身が覗く。数千万年前の樹脂が石になったものだと頭では知っていても、手に載せた重さと温かみのある色には素直に驚いた。原石のままの姿は、ショーケースの中の完成品よりも雄弁だ。
ガラスケースの上の店番
そして、この店の一番の名物かもしれないのが猫だ。琥珀のペンダントが並ぶガラスケースの上に堂々と寝そべり、時々こちらを一瞥しては、また目を閉じる。商品の上が定位置になっているあたり、店の人にも客にも愛されているのだろう。石を選んでいる間、ずっとこの調子だった。宝石店の緊張感をほどよく壊してくれる、いい店番だと思う。
原石を選んだ理由
僕がこの店で選んだのは、磨かれたペンダントでもリングでもなく、ラリマールの原石だった。白い母岩に、カリブの海の色が波のように広がっている石。アクセサリーに加工された石は確かに美しいけれど、原石には「地面から出てきたままの海の色」という説得力がある。バラオナの鉱山でしか採れない石が、植民地時代の通りの店で、猫に見守られながら手元に来た——そう思うと、石を眺めるたびに旅の景色ごと思い出せる。
石は磨かれる前から、もう海の色をしていた。
旅行ガイド(一般情報)
※本セクションは公開情報をもとに編集者が補足したものです。最新は現地・公式情報で確認してください。
フロール・アンバル・ギフトショップ
- 場所: カジェ・ラス・ダマス44番地(ソーナ・コロニアル)。大聖堂やアルカサル・デ・コロンから徒歩圏
- 品揃え: ラリマール・琥珀のアクセサリーと原石のほか、木彫・絵画・カーニバルの仮面など地元の工芸品
- 営業時間: 目安は9:30〜18:00(日曜は午前のみとの情報あり)。訪問時は要確認
石を買うときのメモ
- ラリマール: 青が濃く波模様がはっきりしたものほど高価。染色ガラスなどの模造品もあるので実店舗での購入が安心
- 琥珀: 内部に虫や植物が入ったもの、青く光るブルーアンバーは希少で高価。プラスチック模造品に注意
- 持ち帰り: 原石でも通常の土産の範囲なら問題ないが、大量購入時は申告を求められる場合がある