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キリンが運営する富士御殿場蒸溜所は、日本のウイスキー史の中でちょっと特殊な立ち位置にある。1973年稼働、富士山の伏流水を仕込み水に使い、世界でも珍しく3系統(バーボン系・カナディアン系・スコッチ系)のグレーンウイスキーを1か所で作り分けている。

2020年に「富士(FUJI)」ブランドとしてシングルグレーン、シングルモルトを刷新発売。これまで富士山麓やキリン・ウイスキーといった商品でブレンド原酒として使われていた富士の原酒を、純粋に味わえるラインだ。

富士 シングルグレーン と シングルモルト
富士 シングルグレーン(左)とシングルモルト(右)。共通デザインの和紙ラベル。

富士 シングルグレーン — 世界でも稀なグレーン主役のシングル

シングルグレーンウイスキーは商品として表に出ることが少ない。グレーンは通常、ブレンデッドウイスキーの「ベース」として使われる存在で、シングルとして出すには相当の表現力が要る。富士 シングルグレーンは富士御殿場の3系統グレーンを掛け合わせた、世界的に見ても珍しい構成のボトルだ。

ノーズはまずバニラと洋ナシ、奥にバーボンらしいキャラメルとブランデー的な熟成香。口に含むとまろやかな甘み、後半にスパイス。フィニッシュは長く、樽のニュアンスがゆっくり消える。アルコール度数46%で、ストレートでもしっかりボディが残る。グレーン=薄い、というイメージを覆す一本。

富士 シングルモルト — 落ち着いた構成のジャパニーズモルト

富士 シングルモルトは富士御殿場のモルト原酒のみを使用、46度。富士山麓の冷涼な環境で熟成された原酒は、スペイサイド系の甘やかさにジャパニーズ特有の繊細さが乗った印象。

ノーズはリンゴ、ハチミツ、わずかに花のようなアロマ。口当たりはなめらかで、樽香が前に出ない。フィニッシュは中程度で、麦の甘さがそっと残る。山崎や白州ほどクセが強くなく、初心者にもベテランにも素直に入っていく。グレーンと並べてみると、モルトの「ふくらみ」とグレーンの「奥行き」がはっきり対比できて、富士御殿場という蒸溜所のレンジを実感できる。

シングルグレーンとシングルモルトを並べて飲める蒸溜所はそう多くない。「富士山の伏流水で、3系統グレーンを作り分ける蒸溜所」という産業遺産的な側面も含めて、家の棚に置いておきたい2本だ。

富士御殿場蒸溜所と「富士」ブランド

1973年稼働

キリン・シーグラム合弁で発足、現在はキリンビール傘下。標高620mの冷涼地に位置し、富士山の伏流水を仕込み水に使用。バーボン系・カナディアン系・スコッチ系の3系統のグレーンを1蒸溜所で生産する稀有な構造。

「富士」ブランドの再構築

2020年にシングルグレーン/シングルモルトとして刷新発売。それまでブレンデッド「富士山麓」「キリン・ウイスキー」のベースだった原酒を、富士御殿場のテロワールを反映する単独ブランドとして整理した。

蒸溜所見学

富士御殿場蒸溜所は事前予約制で見学可能。3系統のグレーン蒸溜設備(連続式・ケトル式など)を1つの蒸溜所で見られるのは世界でも珍しい。

両方ともAmazon.co.jpで入手可能。価格は流通状況により変動。

参考リソース

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