アマゾン熱帯雨林が後戻りできない変化に入るのは、地球の気温が3.7〜4度上がったときだ。これが長く科学の標準的な見立てでした。ところが5月にNature誌へ載った研究が、この前提を大きく書き換えます。ポツダム気候影響研究所(PIK)らのチームは、伐採が進んだ場合の崩壊点が1.5〜1.9度まで下がると示しました。パリ協定が目標に掲げる温度帯と、ほぼ重なる水準です。
乾燥化という連鎖
なぜ木を切ることが崩壊の閾値を下げるのか。研究が描いたメカニズムはこうです。アマゾンの樹木は根から吸い上げた水を大気へ放出し、自分たちで雨を降らせる循環を回しています。森が失われると大気中の水分が減り、この自前の降雨サイクルが弱まる。すると同じだけ温暖化が進んでも、林分が受けるストレスは以前より重くなります。論文の筆頭著者ニコ・ウンダーリング氏は、伐採が森の耐性を予想以上に削ぐと述べました。
森は今どこにいるか
アマゾンのうちすでに失われた面積は17〜18%とされます。今回の研究が崩壊リスクの急上昇を見込む伐採率は22〜28%。あいだはわずか数ポイントです。最悪の筋書きでは2040年代に臨界点へ届きうるとMongabayが伝えました。これは「もし何もしなければ」の極端な試算ではなく、「今のペースが続けば」の試算です。
現在地はすでに警戒ゾーンの手前まで来ている、ということになります。
COP30の約束と現実
昨年11月、ブラジル北部ベレンで開かれたCOP30で、ブラジル政府は2030年までに実質ゼロ伐採を達成すると改めて確約しました。けれど2025年の数字は厳しい。5月単月の伐採面積は前年比92%増、年間累計も増勢が続きました。リチウムやニッケル、レアアースなど再生可能エネルギー向けの鉱物開発が採掘圧力を押し上げる構図も、変わっていません。掲げた約束と足元の現実の差をどう埋めるか。その制度づくりが、いちばん大きな宿題として残っています。
森はずっと耐えてきた。耐えられる余裕の計算のほうが、間違っていたのかもしれません。
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参考リンク
- Deforestation-induced drying lowers Amazon climate threshold | Nature — nature.com
- Deforestation and warming could push Amazon to tipping point by 2040s | Mongabay — news.mongabay.com
- Deforestation may push Amazon degradation threshold below 2°C warming | Phys.org — phys.org
- Deforestation lowers threshold for Amazon degradation | Potsdam Institute for Climate Impact Research — pik-potsdam.de
※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。