2025年12月10日、中国が「対ラテンアメリカ・カリブ海第三次政策文書」を発表しました。連帯・開発・文明・平和・人的交流という「運命共同体構築のための5プログラム」を掲げた、包括的な関与方針です。これにトランプ政権は「南北アメリカに敵対的な外国勢力は一切入れない」と宣言しました。けれど中南米の国々は、この「米国か中国か」という二択をそのまま飲み込んではいません。
関与を制度に格上げする中国
第三次文書のねらいは、中国の中南米への関わりを機会主義的なものから制度的なものへと格上げすることにあります。インフラ融資、デジタル技術、安全保障協力にまで広がった関与は、この地域の経済地図にすでに深く刻み込まれています。米シンクタンクCSISは2026年2月の分析で、中南米をめぐる大国間競争はまだ始まったばかりだ、と結論づけました。
ホンジュラスが味わった「踏み絵の痛み」
2023年に台湾と断交して中国を選んだホンジュラスでは、エビ輸出が1億ドル超から1,600万ドルへ急減し、2万5,000人を超える雇用が失われました。期待した中国市場が思うように開かなかったのです。2026年1月に就任したトランプ寄りの新大統領は、中国との合意の見直しを命じました。産業の実態が外交の選択を引き戻す。この構図は、ほかの国が「踏み絵」を踏むかどうかの判断にも影を落とします。
「排除できない」という現実
ピーターソン国際経済研究所は、中南米を「トランプ・コロラリー」と中国の政策文書のはざまの万力にはさまれた状態だ、と表現しました。フォーリン・ポリシーは2026年6月8日の論考で、米国は中南米から中国を排除できないし、すべきでもないと論じています。
実際、ブラジル、メキシコ、コロンビアは「シールド・オブ・ジ・アメリカス」首脳会議を欠席し、明示的にどちらかを選ぶことを拒み続けました。二項対立を外から強いる発想は、現地の産業と外交の実情とかみ合っていません。選ばないという選択そのものが、いまの中南米の答えになっています。
どの国も二択を選ぶつもりはない。その姿勢が問題か知恵かは、問いかけた側の都合で変わります。
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参考リンク
- China's Third Policy Paper on Latin America and the Caribbean – CSIS — csis.org
- The U.S. Can't Exclude China From Latin America – Foreign Policy — foreignpolicy.com
- Latin America in a vise: The "Trump Corollary" vs. China's 2025 policy paper – PIIE — piie.com
- Full text: China's Policy Paper on Latin America and the Caribbean – Chinese Government — english.gov.cn
※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。