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2026年、トランプ政権の対中南米政策が地域を強く揺さぶっている。共通するのは「力で押す」スタイルだ。関税で経済を締め、ベネズエラには軍事力を使い、パナマ運河は「取り戻す」と言う。一つひとつは別々のニュースに見えるが、並べると、アメリカが裏庭をどう扱おうとしているのかの輪郭が見えてくる。

関税という圧力

トランプ政権はブラジル・ボリビア・コスタリカ・エクアドル・ガイアナ・ニカラグア・ベネズエラの7か国に対し、相互関税の税率を再確認したと報じられている。北米自由貿易の枠組み(USMCA)の見直しも2026年に始まり、原産地規則や自動車部品の現地調達比率の変更なしには全面更新に消極的だという見方が出ている。

メキシコの対応は対照的だった。報復ではなく、麻薬組織対策と移民管理で具体的な行動を見せ、関税の猶予を引き出す道を選んだ。カルテル幹部55人の引き渡し、第三国からの送還者約1万3千人の受け入れ、そして中国製自動車への関税を20%から50%へ引き上げ——アメリカの要求に沿う形で動いた。圧力に正面からぶつかるか、のむか。各国の立ち位置がここに表れている。

ベネズエラ:軍事力という一線

もっとも衝撃的だったのはベネズエラだ。2026年1月3日、米軍は「絶対的決意作戦」を実行し、カラカスへの急襲でマドゥロ大統領を拘束。ニューヨークの連邦裁判所で麻薬テロの罪状で出廷したと伝えられている。一国の元首を他国が軍事作戦で拘束する——これは外交というより、力の行使だ。

3月にはイラン危機が世界の石油供給を脅かすなか、米国はベネズエラ産原油への制裁を緩め、国営PDVSAから米企業への販売を認めた。民主化の条件より、エネルギー安全保障を優先した形だ。原則より実利。ここにもトランプ流が出ている。

パナマ運河:「取り戻す」の波紋

パナマには個人的な思い入れがあるので、運河をめぐる動きは特に気になっている。トランプ大統領は運河への中国の影響力を理由に「取り戻す」と繰り返し、2月1日から3日にはルビオ国務長官がパナマを訪れた。パナマのムリノ大統領はこの主張を強く拒否したが、米国は運河の主要な港湾運営に中国が影響を及ぼしていると主張し、香港系CKハチソンの港湾資産をブラックロック主導の連合へ売却する交渉の引き金になったとされる。

運河はパナマの主権の象徴だ。1999年にアメリカから返還された歴史を、現地の人たちは誇りをもって語る。そこへ「取り戻す」という言葉が投げ込まれる重さは、地図を眺めるだけでは分からない。これは港の経済の話であると同時に、主権と歴史の話でもある。

力の外交が残すもの

関税、軍事、領土的な発言。手段は違っても、底に流れているのは「アメリカ第一」を力で通す姿勢だ。短期的には相手を動かせる。実際メキシコは譲歩し、ベネズエラの体制は崩れ、パナマは交渉のテーブルに着いた。だが力で動かした関係は、力が抜けたときに何が残るのか。地域の信頼、長期の同盟、中国との綱引き——そのあたりへの影響は、これから効いてくる。

中南米を旅して感じるのは、この地域が常に「北の大国」との距離感を測りながら歩いてきたということだ。2026年は、その距離が急に詰められている年だ。地図の上では小さな国々が、この圧力にどう応えるのか——そこに、これからの中南米の輪郭が出る。

力で動かした関係は、力が抜けたときに何が残るのか。

参考リンク

※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の外交・通商の動きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。