トランプ政権下の連邦予算削減が、ラテンアメリカの公衆衛生研究を直撃している。米国際開発庁(USAID)は2025年に5300件超の助成金・契約を打ち切った。失われた資金は総額270億ドルとされる。ランセット誌(Lancet Regional Health – Americas)が2026年に発表した論考は、この削減でラテンアメリカの公衆衛生研究と医療衡平性が脅かされていると警告し、問題の根を正面から扱った。
依存の深さを数字で見る
ラテンアメリカの公衆衛生研究は長年、米国の連邦資金に頼ってきた。HIV、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)といった疾患の研究の多くは、NIHやUSAIDを通じた米国の資金で動いてきた。問題はそこにとどまらない。何を調べ、何を後回しにするかという研究テーマの選び方そのものが、資金の出し手の関心に寄せられてきたと指摘されている。今回の削減は予算が減ったという話ではなく、研究の優先順位を外から決めてきた仕組みが表に出た出来事だ。
USAID撤退の世界規模の影響については、もっと大きな数字が出ている。ある研究は、2026年から2030年の助成が失われれば世界で1400万人以上が追加で死亡すると試算し、うち450万人を5歳未満の子どもとした。医療インフラが脆弱な国ほど、被害は重くなる。
「依存をやめる」という処方箋
ランセットの論考が書いているのは危機の深刻さだけではない。外の資金が研究の優先事項を握るなら、地域内の資金で地域の課題を自分たちで立て直せ、と著者たちは主張する。動きはすでに出ている。ブラジルはベレンCOP30に向けて「ベレン健康行動計画」を立ち上げ、気候変動と健康への適応をめぐる監視・政策立案・イノベーションの三本柱を据えた。PAHOも高齢化やケア体制づくりに関する政策指針を2026年に相次いで出した。地域機関が外部資金の代わりになる土台を自前で築こうとしている。
障害政策や社会保障の現場から見れば、研究資金の途絶は遠い話ではない。補装具費支給、リハビリ、長期ケアでも、国際プロジェクトを通じて積み上げた人材と知見が各国の政策実装を支えてきた。その梯子が外されるとき、真っ先に割を食うのは、いつも声の届きにくい人たちだ。
NIHやUSAIDの資金が消えて初めて、各国は自前の問いと予算で研究を立て直せるかを試される。
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参考リンク
- The Lancet Regional Health – Americas — thelancet.com
- NBC News — nbcnews.com
- Atlantic Council — atlanticcouncil.org
- The Lancet — thelancet.com
※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。