マナグアから長距離バスに乗り、ニカラグア北部の都市レオンへ向かった。レオンはスペイン語でライオンを意味する。名前の通り、町の中心にあるレオン大聖堂にはライオン像が鎮座していた。
サンディニスタの本拠地
レオンはサンディニスタ民族解放戦線の本拠地として知られており、内戦の痕跡が今も色濃く残っている。壁に描かれた鮮やかなムラールや、至る所に立てられた記念碑が、この街がただの観光地ではないことを物語っている。
町には数多くの教会が存在し、植民地時代のスペイン建築と、革命の記憶が奇妙なコントラストを描いている。
ルベン・ダリオの住居跡
レオンが誇るもう一つの文化遺産が、19世紀の詩人ルベン・ダリオの住居だ。スペイン語詩に多大な影響を与えたとされるこの詩人の生家が、現在は博物館として一般公開されている。
スペイン語圏ではダリオは教科書に載る存在らしく、現地の人に「ルベン・ダリオを知っているか?」と聞かれたが、残念ながらその時の僕は全く知らなかった。旅から帰って調べてみると、なるほど確かに偉大な詩人だった。
英雄記念館
もっとも印象に残ったのは英雄記念館だった。内戦参加者の記録を保存するために作られたこの施設は、地域の主婦たちが写真を集め始めたことがきっかけで誕生したという。
訪ねると、スタッフの女性たちが中庭でご飯を食べていた。猫が一匹、のんびり足元をうろついている。「どうぞ」と笑顔で迎えてくれた。
白髪のおばあさんが話しかけてきた。息子さんを革命で亡くしたこと、写真が手元になかったので館内に飾ることができなかったこと。そして——「私の息子は、あの角を曲がったところで死んだの」と、外の路地の方をそっと指さした。
「いまは平和だから」と、おばあさんは静かに笑った。その言葉の重さが、しばらく胸に残った。
壁一面に貼られた若者たちの写真を見ながら、彼らのほとんどが10代から20代で命を落としたことを知り、言葉を失った。革命は教科書の中の出来事ではなく、ここに生きた人々の物語だった。
ロブスターと中米の食卓
観光の後は食事。レオンの食堂でロブスターとカレーを食べた。合計2,000円ほど——中米価格で考えると少々高めだが、ロブスターでこの値段なら安い。
翌日はラム酒工場を見学してから、次の目的地エルサルバドルへ移動する予定だ。
中米の食事は旅の記憶になる——確かにそうだった。
翌朝のトイレも含めて。
旅行ガイド(一般情報)
※本セクションは公開情報をもとに編集者が補足したものです。最新の入国・治安・営業情報は公式サイトでご確認ください。
レオンと大聖堂(ユネスコ世界遺産)
- 1524年に建設された旧レオン(León Viejo)はモモトンボ火山の噴火で放棄され、1610年に現在地へ移転。旧レオン遺跡もユネスコ世界遺産(2000年登録)。
- レオン大聖堂(バシリカ・カテドラル・デ・ラ・アスンシオン)は1747〜1814年に建造された中米最大級のバロック様式大聖堂。2011年にユネスコ世界遺産登録。
- 大聖堂地下にはニカラグアの国民詩人ルベン・ダリオ(1867-1916)の墓があり、ライオン像が守っている。
サンディニスタ革命とレオン
- レオンは1979年のサンディニスタ革命(FSLN)の精神的拠点で、ソモサ独裁政権打倒の最前線となった都市。
- 英雄記念館(Museo Galería de Héroes y Mártires)は遺族や母親たちが息子の写真を集めて作った、市民主導の記念施設。
- 市内のいたる所に革命のムラール(壁画)が残り、現代史を体感できる「生きた博物館」と称される。
- ルベン・ダリオ博物館は詩人の生家を改装したもので、入場料は数ドル程度。
アクセス・治安・実用情報
- マナグアからは長距離バス(La UCA や Mercado Israel Lewites 発)で約1.5〜2時間。所要約90km。
- セロ・ネグロ火山(Cerro Negro)のボードサーフィン(ボランタリング)は近郊で人気のアクティビティ。
- 2018年以降のデモやストの影響で街の雰囲気は変動するため、外務省海外安全情報で最新状況を確認推奨。
- 名物料理:ロブスター、ナカタマル(バナナの葉に包んだ肉入りトウモロコシ料理)、地元ラム酒Flor de Caña。
参考リソース
ニカラグアと中米の旅行情報を1冊に——『地球の歩き方 中米編』はグアテマラ・ベリーズ・エルサルバドル・ホンジュラス・ニカラグア・コスタリカ・パナマを網羅。日本語のガイドブックとして定番。
