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寒波が来ている。こういう夜は熱燗に限る。電子レンジで雑に温めるのではなく、ちゃんと燗をつけて飲みたい——そう思って引っ張り出したのが、写真の道具一式だ。左は徳利とぐい吞みのセット、右がろうそく式の燗つけ器。酒を徳利に移し、燗つけ器の上に乗せてじわじわ温める。時間はかかるが、その分ゆっくり均一に熱が入る。これで飲む熱燗は電子レンジとは別物だ。

道具を出すついでに、日本酒を2本買ってきた。

熱燗セット
燗をつけるための道具一式。
燗つけ器と猪口
ろうそく式の燗つけ器。じわじわ温まる。

F60 萬寿鏡(まんじゅかがみ)

F60萬寿鏡
F60 萬寿鏡(黒ボトル左)と八海山 雪室貯蔵三年(白ボトル中央)。今回の2本。

1本目はF60 萬寿鏡。新潟の蔵元・萬寿鏡が出している普通酒だが、使っている酵母が吟醸酒向けの協会1801酵母というのが面白い。マイナス10度で貯蔵したあと、瓶詰め時に一度だけ加熱処理する「生貯蔵酒」だ。

ぬる燗(40度前後)で飲むと、吟醸系酵母由来のふわっとした果実香が鼻を抜ける。熱燗(50度前後)にするとさらに香りが立ち、辛みがきゅっと締まって酒らしい輪郭が出てくる。食中酒として使いやすい。味の主張が強すぎず、鍋や焼き魚と一緒にちびちびやるのに向いている。

普通酒という括りに反して燗映えする。Amazonで1800ml・2,000円台で買えるコスパを考えると、燗酒入門の一本として十分すぎるくらいだ。

純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年

2本目は純米吟醸 八海山 雪室貯蔵三年。魚沼の伝統的な雪を使った低温貯蔵庫で3年間熟成させた限定品だ。雪室という安定した低温・高湿度の環境でゆっくり育つことで、角が取れてまろやかな口当たりになっている。

飲み口はやわらかく、熟成由来のほんのりとした旨みがある。冷や(常温)か花冷え(10度前後)で飲むと吟醸香が素直に出る。燗にすると香りは少し引っ込むが、代わりに甘みとコクが前に出てきて、これはこれで別の表情になる。ぬる燗止まりにしておいた方が個性が活きる印象だ。

720mlで3,000〜3,500円前後。F60 の1.5倍ほどだが、それだけの理由はある。家で一人しっぽり飲むときや、酒好きへの手土産として使いやすい。

燗酒は温度によって全然違う顔を見せる。ぬる燗(40度前後)、上燗(45度前後)、熱燗(50度前後)——同じ酒でも変わる。温度計を一本持っておくだけで、家飲みの質が格段に上がる。F60 は熱燗まで引き上げて良し、八海山はぬる燗で止めておくのがおすすめ。