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1月3日、米軍特殊部隊がニコラス・マドゥロを拘束し、ニューヨークへ移送しました。麻薬密輸をめぐる連邦起訴に基づく電撃作戦でした。その2日後、副大統領だったデルシ・ロドリゲスが暫定大統領に就任します。ベネズエラ史上、初めて女性が大統領の職務を担う瞬間でした。それから5か月。多くの人が期待した「民主化への移行」は、まだ始まっていません。僕はこの間の動きを追いながら、ひとつの言葉が頭から離れませんでした。「移行」と「正常化」は別物だ、ということです。

2番手が1番手になっただけ

ロドリゲスはマドゥロ政権の副大統領でした。体制の2番手が、そのまま1番手の椅子に座った形です。チャベス主義(チャビスモ)を基盤とする政治エリートの顔ぶれは入れ替わっていません。政府機関も、安全保障部門も、国営石油公社PDVSAの指揮系統も、マドゥロ時代の構造をそっくり引き継いでいます。国際危機グループは、起きたのは「取引(transaction)」であって「移行(transition)」ではない、と表現しました。トップの名前が変わっても、その下の組織が丸ごと残っているなら、何が変わったのかという話になります。

「絶対に選挙はやる」の中身

ロドリゲスは2月12日のNBCのインタビューで、自由で公正な選挙を「絶対にやる」と語りました。ただ、いつやるのかというタイムラインは曖昧なままです。米エネルギー長官のクリス・ライトは、選挙準備に9〜10か月かかると認めています。逆算すると、最良の筋書きでも実施は2027年中頃というのが現実的な線になります。反体制派の旗手で、ノーベル平和賞を受賞したマリア・コリーナ・マチャドにとって、この状況はかなり複雑です。トランプ政権はロドリゲスを事実上の交渉相手として扱い、マチャドを中心に据えませんでした。誰と組むかという選択が、そのまま民主化の速度を決めていきます。

「ベネズエラを運営する」という言葉

トランプは、米国が一定期間ベネズエラの運営にかかわると宣言しました。石油収入は米国管理の口座を通すよう誘導され、制裁の緩和や資金の流れを使った影響力の行使が続いています。ただ、その「管理」がいつ終わるのか、どんな条件で民主化に進むのかという出口は示されていません。アメリカズ・クォータリーは、ロドリゲスが「正常化という出口」を選んだと分析しました。選挙を急ぐより先に経済を安定させ、国際的な孤立を解く。それが現政権の優先順位だという読みです。

問いは同じ、問う人が変わった

外から民主化を強制するのか、それとも内部から時間をかけて変えていくのか。ベネズエラをめぐる根っこの問いは、マドゥロ時代から変わっていません。変わったのは、その問いを口にする側の顔ぶれだけです。米軍の作戦で大統領が入れ替わり、女性が初めてトップに立っても、PDVSAの組織図も、選挙の日程も、まだ動いていない。5か月という時間は、移行を始めるには十分だったはずなのに、です。

政権の顔は変わったけれど、ベネズエラの制度はまだ何も入れ替わっていません。

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※ 本記事は公開情報をもとにした筆者の解説・私見です。最新の数字・日程・手続きは各国政府や一次情報でご確認ください。引用は最小限とし、出典を明記しています。