メキシコシティの中心、ソカロ(Plaza de la Constitución)。標高2,240mに広がるこの広場は、240×240mで世界最大級の中央広場のひとつ。四方をバロック建築の歴史的建造物に囲まれており、ここに立つだけでメキシコの重層的な歴史を肌で感じることができる。周辺一帯の歴史地区はUNESCO 世界遺産(1987年登録)「メキシコシティ歴史地区とソチミルコ」に登録されている。16世紀のスペイン征服直後、アステカ帝国の中央神殿地区跡を更地にして造成された広場で、今もアステカ・植民地時代・現代メキシコの3層が同じ場所で重なる稀有な空間だ。
メトロポリタン大聖堂
ソカロに面して建つメトロポリタン大聖堂(Catedral Metropolitana)は、1573年から約240年かけて建設された、ラテンアメリカ最大のカトリック聖堂だ。バロック、ルネサンス、新古典主義と複数の建築様式が折り重なった外観は、その長い建設期間の産物でもある。
地盤沈下のため建物全体が傾いており、内部に入ると床の微妙な傾きが確かに感じられる。それもまた、この都市の地層の歴史——かつてアステカの都テノチティトランが存在し、その上にスペインが植民地都市を建設したという事実——を物語っている。
テンプロ・マヨール——アステカの中心神殿
大聖堂のすぐ隣に位置するテンプロ・マヨールは、14世紀に栄えたアステカ帝国の首都テノチティトランの中枢だった神殿だ。雨神トラロックと太陽・戦神ウィツィロポチトリの2神に捧げられ、同じ位置で7段階にわたる増築を繰り返しながら高さ60m近くまで成長したとされる。スペインの征服後、神殿は破壊され、その石材はそのまま大聖堂の建設に流用された。1978年2月、地下鉄工事中の作業員が「コヨルシャウキの円盤」(直径3.25mの女神彫刻)を偶然発見したことをきっかけに本格的な発掘調査が始まり、それまで地中に眠っていた遺構が現代に蘇った。
併設のテンプロ・マヨール博物館には、発掘された膨大な数の出土品が展示されている。アステカの世界観を凝縮した彫刻群は圧巻だ。神殿の断面模型を見ると、建設と改築が重ねられた構造がよくわかる。
パラシオ・ポスタル——隠れた名建築
テンプロ・マヨールから徒歩5分ほどのところにあるパラシオ・ポスタル(Palacio Postal)は、1907年完成のアール・ヌーヴォー様式の郵便局だ。イタリア人建築家アダモ・ボアリの設計で、現役の郵便局として機能しながら、内部はまるでヨーロッパの宮殿のような装飾が施されている。通常は無料で見学でき、建物内部にも入れる(見学範囲やツアーにより異なる場合あり)。
隣のパラシオ・デ・ベジャス・アルテス(国立芸術宮殿)とともに、ピクサー映画『リメンバー・ミー』のビジュアルにインスピレーションを与えたといわれている建築群のひとつだ。映画を見た人は、見覚えのある装飾に気づくかもしれない。
ソカロ周辺は「層」を意識しながら歩くと面白い。アステカの石の上にスペインの大聖堂が建ち、その隣に19世紀のアール・ヌーヴォー建築がある。
メキシコシティという都市はそのまま歴史の断面図だ。
今回訪れた場所
旅行ガイド(一般情報)
※本セクションは公開情報をもとに編集者が補足したものです。料金・運行情報など最新の状況は公式サイトでご確認ください。
アクセス
- 地下鉄: 2号線 Zócalo駅 直結(広場の地下にホームあり)
- メトロブス: Línea 4 República de Argentina 駅 徒歩5分
- テンプロ・マヨール入場料: 約 MX$95(外国人)。月曜休館
- パラシオ・ポスタル: 平日9:00〜18:00頃、土曜も開放(時期により変動)。入場無料
- 所要時間: ソカロ+大聖堂30分、テンプロ・マヨール+博物館 2〜3時間、パラシオ・ポスタル 30分。半日コースが目安
近隣のおすすめスポット
- 国立宮殿(Palacio Nacional)— ソカロ東側、ディエゴ・リベラの大壁画「メキシコの歴史」が必見
- ベジャス・アルテス宮殿(Palacio de Bellas Artes)— 大理石の国立芸術宮殿、リベラ・オロスコ・シケイロスの壁画
- タイルの家(Casa de los Azulejos)— 18世紀のタイル張り邸宅、現在 Sanborns 本店
- メルセド市場(Mercado de la Merced)— ラテンアメリカ最大級の伝統市場、ソカロから徒歩15分
- ガリバルディ広場(Plaza Garibaldi)— マリアッチの本場、夜の音楽スポット